春の縁側
日にかざし
針穴に糸をとほすおまへに
赤い糸を信じるかと 座敷から問ふと
背中でちひさくわらつて
ちよつとあなたとほしてくださいと云ふ
針と糸をかゝげた
おまへの両の手から
やうやく霜焼けが去らうとしてゐる
春
繕ひものと日だまりにうづもれて
みけはにやあとも鳴かず
私は湯呑みをふたつ提げて
あたゝかな縁に出る