読書つれづれ



りかさん』 梨木香歩  (偕成社・1999年12月 初版第一刷・226p)

 図書館勤めの友達に勧められて読みはじめた梨木香歩だが、この作品も、今まで読んだ他作品に劣らず、面白かった。
「養子冠之巻」と「アビゲイル之巻」に大きく章分けされている。

物語は、主人公の少女、ようこが、「リカちゃん」人形を欲しがった時に、
祖母から「りかさん」という古い日本人形を贈られるところから始まる。
「りかさん」は不思議なお人形で、ようこの家の雛人形をはじめ、
人形たちのさまざまな思いをスクリーンに映し出す力を持っている。
「人形の役目は、持ち主の気持ちのはみ出した部分を、きれいに吸い取ること」と言い、
ようこの出会う人形たちの過去を、持ち主の物語も含めて、伝え、整理していく。
胸の痛くなるような、悲しい過去の物語を、希望ある未来へと昇華していくことを示唆し、
『からくりからくさ』へと物語は続いていくのだ。

これはこれで、ひとつの物語なのだが、
前作『からくりからくさ』(新潮社)を合わせて読むと、さらに楽しめる。
容子という主人公の女性が、亡くなった祖母の残した広い家で、
自分と同年代の女子学生三人を下宿生にして、生活を始める。
眠りについたままの「りかさん」、そして四人がおりなす物語は、『りかさん』で示唆された物語の行方となっており、
近所の児童書専門店の店主さんいわく、「どちらを先に読まれた方にも、好評です。」とのこと。

梨木香歩の書く文章は、静かで、力強く、情景が深く心に刻まれる。
テーマそのものの描き方としては、いつもすこしだけ、おおげさな感じに伝わってくるようにも思うのだけれど、
ファンタジーがファンタジーでありながら、地に足がついた、
ずっしりとした重みを持って迫ってくるのは、その筆致のせいだろう。
そのテーマの重みと、淡々とした物語の流れ、すべてのものが「生きて」いるかのような情景描写、
登場人物たちの個性、それらが絶妙なバランスを保って、作品世界を構築しているように思う。
作者の少し距離を置いた視点も、その重要な要素だろう。
『裏庭』、『西の魔女が死んだ』もそれぞれよかった。

(2001/2/17)



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