詩は舞いおりてくるのです



詩は舞いおりてくるのです
フツフツと煮えたぎる
湯のような憤りもなく
メラメラと燃えさかる
炎のような烈しさもなく
ただ
静かに舞いおりてくるのです
それが実によくわかるのは
太陽が
地面の一番深い底へ
沈んでしまったかのような
夜更けのことで
その手は
やさしく肩に触れ
慰めをくれるのです
詩は舞いおりてくるのです
生きることの慰めを抱えて
ただ
静かに舞いおりてくるのです





 作者は睦月祥子さん。
 あるファンクラブの会報を通じて、彼女の作品を知り、また、処女詩集出版のニュースを知り、詩集を購入した。
 たまたま、私が出版を考えていた出版社だったため、親近感を感じて、感想の手紙を書き、出版社に送った。
 それは山形に住む彼女のもとに転送され、美しい文字の丁寧なお手紙が届き、その時以来、細々とだが文通が続いている。
 私よりひとまわり年上の方だが、いつもその感性にはっとさせられる。そして、心洗われる気がする。
 作品もしかり。特にこの詩。詩集『白の陶器』(新風舎)の冒頭の作品だ。
 いろいろなことがあって、心が疲れた時、ふと白い表紙をめくると、この詩に出会う。
 それはいつも夜更け。
 この詩が心の中にしんしんと染みてくる。
 私が何か書こうとするのも、昔から決まって夜更け。
 そうして、この詩と、自分の「書く」ということと、それぞれから癒され、生きている。
 これを読む時、いつも少しだけ、涙がにじむ。





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